山下勢山系の特徴についてB


勢山×今西系で作られた全国優勝鳩(茨木エンゼルロフト血統書より転載)

 特に、レース後の肉の回復を図るときには、餌の半分を麻の実にされていたこともあります。麻の実は、麻薬の作用があり、肉をやわらかくする働きがあるそうです。「どんな鳩にも肉をつけられる。餌で調整すれば簡単。」とおっしゃっていました。
 私としてしは、もう少し柔らかい肉質の鳩がいいので、プロミスには、ファブリーの血が1/4はいっています。800149号は1/2ファブリーだったうえ、勢山の源はハンセン系で、ファブリーとは系源が同じであったというのが、理由です
 山下氏の使っていた異血は、シオン、ブリクー、デズメットマタイス、ベルランジ、ヤンセン、ポシェといったところです。いずれも、1/2で性能を検定され、灰色で活躍した仔のみが種鳩となります。稚内2号は、羽色が胡麻だったので鬼子扱い?され、稚内1300キロ総合6位、総合2位の活躍の翌年も、稚内のレースに参加させています。胡麻であった為、厳しいチェックで
す。
 勢山を飛ばすコツは、1/2にすることです。そしてもう一度純勢山とかけて3/4にもどす。また異血とかける。この繰り返しです。プロミス号は3/4、ゆきかぜ号、晴嵐号は1/2です。そして灰色で活躍した鳩だけが次の世代につなげていきます


ブライトスター×ポシェで作られた1/2勢山系で全国3位
(茨木エンゼルロフト血統書より転載)

 目は銀目です。もともとは、柿目が多い血統ですが、銀目の血統に変えられました。鳩は近親にすると銀目が増えます。銀目は、奇形の1歩手前となるそうで、ギリギリの線となるそうです。銀目と銀目の交配は避けるように指導されていました。勢山系は、生後30日くらいで、目にはっきり色が出ます。早熟であることを意識されたのか、銀目が多いからなのかは、私にはわかりません。

 体型は小型です。小回りが効いて、山岳地帯でのハヤブサ等の追撃をかわします。運動神経が発達しているのか、ストールトラッブから外に出ることが、他の系統に比べ非常に多い系統です。また、足が短く、構えが低いです。長距離輸送に強くなるよう改良された結果だそうで
す。
 私は、勢山系から飼育を始めたのですが、外国の系統の鳩はに比べ、骨太であるように思います。特に脚の太さは誰もが感じるところだと思います。但し、老鳩になっても、かってのドルダン系のように脚環が回らなくなるようなことはありません

 基本的には、長距離ハードで後かえりが多いようです。プロミスの父親も半年後に帰った鳥です。山下氏は、後帰りをする鳩は、自然環境にうまく順応できる性能を持っているので、大事にするように指導されていました。

 フィリピンのルバング島で、戦後30年間も戦闘を継続されていた陸軍中野学校出身の小野田寛郎少尉の本を読んだときに、物の考え方が山下氏と非常に似ているので、お話しをしたところ、山下氏も、16歳で海軍に志願され、特殊教育を受けたうえで、南方の島で玉砕戦を経験、数少ない生き残り組だったそうです。極限状態の中での状況判断力等、生き残る能力を備えた方だったのだと思います。その考え方をYSの改良に組み込まれましたので、基本は必ず帰ってくることを前提とされ、スピードは2番目とされていました。
 雨天レースでも、羽へのダメージが少ないように、雨覆羽を太くするように改良されていることは、生き残る智恵のひとつだと感じています。

 生前のお話しを、思いつくままに書きましたので、まとまっていませんが、ご参考になればと思っています

 このように、山下勢山系には、哲学、思想があるのが大きな魅力と私は感じています。
 また、細川英二郎氏は、戦中後の食糧難の時代に、サツマイモの蒸したものを与えていたそうですが、栄養が足りず、数年間、作出不能となったそうです。そうした先人達の苦労と情熱が、この血統には流れているのです。

 今後も、この血統を大切に、永く飼育していきたいと思っています。

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