放鳩訓練の検証B


訓練コース(200〜250キロの短距離レースは琵琶湖の西側が帰還コースとなる。)


中間訓練につい

 中間訓練とは、レースとレースの間に行う訓練のことで、私の場合、以下のとおりに区別し、その都度テーマをもって訓練を行うこととしています。

1.レース帰還後の休息により、緩んだ筋肉に活を入れ、スピードの再生すること。
 この場合、これまで以上のスピードが向上することを期待するのではなく、あくまで再生が目的で、次のレースのために余計な疲れを残さないよう、日程や距離を慎重に検討します。
 私の場合、今津町は、70キロの距離で、谷間を一直線に南下し約1時間少しの時間で戻ります。1時間とは、舎外の時間とほぼ同じで、比較的鳩に負担が少ない距離と考えています。


滋賀県今津町より私の鳩舎(赤丸)を望む(中央の谷を下ると八瀬大原を抜け、京都盆地に至
るので帰還率が良い。但し近年は猛禽類が増加しているので、放鳩時に注意を要する。)

 ウェイトコントロールのために行う鳩舎も多いようですが、私の鳩舎のレーサーは、ヤセ方
が多いので、飼育系統に適した訓練が必要です

2.疲れで鈍った感=頭の回転の再生。
 
 帰還に不可欠な方向判定は、無論先天的に鳩が持つ能力ですが、迷鳩が、帰還コースと全く反対方向の土地から発見されることがしばしばあります。これは、連戦により疲労したレーサーの勘違いによるものと考えられます。何故なら、その鳩を回収し、充分な休養を与えたうえで再びレースに参加してやると立派な成績を収めることがあるからで、一概に鳩の能力が劣っているとは言いきれないことがしばしばあるからです。
 鳩レースにおいては、一度の「うっかり」が即落伍につながるので、レースの参加前には、例え10キロ程度で構わないので、訓練を行ってやることは効果的と考えています。
 私達人間が、月曜日の朝は仕事の調子が悪いのと同じで、鳩達もレースから疲れて戻った後の休養後は、頭も体も調子が出ないはずです。バスケットに入れられるだけでも、緊張感を取り戻すように感じます。

3.次のレースでの帰還コースの予習

 鳩が地形を学習して覚えるか否かについては、意見が分かれますが、私は覚えると考えています。例えば、迷い鳩を回収に行った折、自分の鳩舎の地理環境に似ていた経験が多くあります。私の場合、屋上に鳩舎がある、近くに山がある、高架橋に電車や道路が走っている等の共通点が多く、また、一度迷い込んだ鳩舎に、1年後にもう一度迷い込むことがあり、勘違いだけでは説明出来ません。
 レース前に、帰還コースの通過地点を予測して中間訓練を行う鳩舎は多く、新潟からのレースの場合、近隣鳩舎は滋賀県栗田郡、または八日市で行っていることが多いようです。
 一般に訓練は朝に行うことが多いのでずが、実際のレースでの通過時刻を予測して午後に行っている鳩舎もあるようです。太陽の位置を含めて予習しようというものです
 実は私も、1999年に800キロレースで初めて総合優勝した際には、当日帰還を目指て、滋賀県今津町を15時30分に飛ばして、帰還が17時過ぎという訓練を3回続けて行いました。(但し、そのレースは難レースになり、帰還は翌日15時で、効果があったのかどうかは不明です。)

最後に

 前述のとおり、「訓練を行うとレースに勝てる。」と私は考えていました。そして、悲しいまでの労力と費用を使って、人一倍訓練を行い失敗をしてきました。
 大事なことは、「今、自分の鳩に必要なことは何か。」であり、それが訓練か、休養かを見分けることだと思います。
 また、自分の飼っている系統の特性をよく把握することです。私のトリ は太らない肉質です。いわゆる、訓練で叩いて飛ばすトリではありませんでした
 今思うと、肉が落ちているにもかかわらず、どんどん訓練を行って、余計に疲れさせている
 ことが多かったと思いますが、その時は全く気がつかず、明日の勝利を夢見て夜明けの高速道路でアクセルを踏んでいました。
 私と同様、結果の出ない人ほど、猛訓練を行います。しかし、今一度、訓練の本当の意味を考えてみられることをお奨めします。
 結論は、自分の鳩が必要とする訓練を、適正な時期と距離と場所から行う。漫然と訓練をするのではなく、その訓練にテーマを見出すことです。
 学生時代の私は、勿論自動車を持っていないので、100キロの訓練は出来ませんでした。 しかし、スクーターの荷台に籠を載せて、大学から15キロの訓練をシーズン前に20回程度 実施していました。上位入賞こそ少ないものの、大人の鳩舎より帰還率が上でした。
 何度も訓練されることにより、後天的な方向判定能力を獲得させていた結果ではないかと、思っています。
 数年前のことです。私のクラブの鳩舎が、都合で300キロレースをリタイアしました。この鳩舎はそのシーズンでの飼育中断が決定していた為、捨て身で次の400キロレースの直前に、180キロの個人訓練を旅行のついでに敢行されました。レースの結果、帰還率は悪かったものの、総合優勝を遂げられたことは、訓練の重要性とその影響を示唆するものだと思います。

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