自由舎外に関する一考察そのB


YSプロミス号98−2109 B ♂ 矢野裕之作翔 1999年オール西日本グランプリレース800k総合優勝 雑誌「愛鳩の友」2001年11月号より転載 腰の太さ、背線の美しさが自慢です。

5.総合優勝と自由舎外の関係一応の結果が出たと思える700キロ、800キロレースの展開はいずれも翌日レースであった。翌日レースの場合、前日の夕方にどこまで鳩が飛び、どのような場所で夜営するか、また翌朝の飛び立ち時間が、重要な要素となる。自由舎外に慣れた小生の鳩舎の鳩は、夕方の暗い時間も舎外で飛び続けており、また早朝暗いうちから飛び立つ。過去、暗い時間に慣れていない鳩を無理に舎外に出すと、恐怖を感じるのか低空を凄いスピードで飛び、電線に衝突して多くの鳩を失っている経験から考えても自由舎外を行うことにより鳩は暗闇に慣れるのではないかと考える。
 また、自由舎外を行うと、鳩は温度が高く飛び難い日中でも運動を続ける。このレースにおいて翌日朝は雨だった。雨上がりの最も湿度と温度が高くて飛び立ち難い時間である日中において、飛び立ち時間の早さが帰舎時間の差に現れたのだと考えている。優勝鳩はキールのハンデもあり決してスピードのある鳩ではない。それはこれまでの翔歴を見れば一目瞭然である。
 また、一つだけ付け加えると、翌日レースで活躍した鳩は、後日帰りの経験を持ったものが多いと感じる。すでに夜営の仕方を学習しているものと考える

6.自由舎外の欠点
 素晴らしい結果をもたらした自由舎外にも欠点がある。小生が感じた欠点を挙げてみる。

* スピードに乗った舎外は続き難い。また、旗を振ると遠いところの電柱に止まる鳩が出てくる。

* 鳩舎内に営巣出来ない場合、外で営巣をする

* 迷い込み鳩や土鳩、スズメのみならず、ヒヨドリや百舌の訪問が極端に増え、病気感染の恐れが非常に高くなる。

* 出舎口付近で鳩が日光浴を行うので、糞で汚れる。

* 換羽を伴う秋レースには絶対に実行出来ない

* 怪我、失踪する鳩が極端に増加し、効率がかなり悪い。(秋の最終レース経験鳩も失踪してしまうことが多い)
 
7.自由舎外の今後の課題
 今シーズンは終始自由舎外を行った。最後に目論見どおりの結果は出たものの、短、中距離レースでの惨憺たる成績には恥ずかしいものがある。しかしながら、自由舎外が短、中距離レースに不向きと結論付けるのは早計である。昨年秋には同じクラブの鳩舎が自由舎外により300キロレースで支部優勝を遂げており、現在のやり方に何かをプラスαすることで、対応可能となるはずだ。今後は全距離、全天候のレースにも対応出来る方法を模索したい。
 しかしながら、現在の行きすぎた短、中距離の晴天、スピード指向により帰還率の低下が嘆かれる鳩レース界において、時代の流れを見据えて最初から悪天候、長距離レースでの勝利を意識した自由舎外への移行による総合優勝は、己の判断と決断により成し遂げられたものであり、堂々と胸を張れると我ながら満足している
 飼育環境も厳しく、思った調整は難しいが、比較的楽な飼育方法である自由舎外によって、悪天候、長距離レースにおいて1シーズンに一度は見せ場を作りたいと思う。
 なお、今回の総合優勝は、決して自由舎外だけで勝ち取ったものではなく、YS系という血統の力(在来のほうが、自由舎外に向いている? 当舎では輸入系では成果が出ていない。)、諸先輩方の指導、家族の協力、天気まわりによる土曜日の放鳩、全てが運というタイミングによって合致して初めて成し遂げることが出来たのだと考えていることを申し添え、筆を置くこととする。
(本稿については、多くのレースマンから、ご意見をいただき、誠に感謝しております。なかには、鳩レース界のプロジェクトXという過大な評価もいただきました。私自身は、弱小公立高校野球部の甲子園出場をイメージしています。)

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