自由舎外に関する一考察そのA

 平成9年の春季レースに参加していた鳩のうち、1羽の小柄な雌鳩がいた。この鳩は光風デルバール系で同腹にて2羽同時に迷い込んだ仔鳩のうちの1羽で、飼主に連絡して譲っていただいた鳩である。この鳩は小柄な体を生かして入舎口から自由に外へ飛び出し、勝手に自由舎外を行っていた。当時は、「流石に迷い込み鳩だけあって土鳩のようなやつだ。」と考えていたのである。ところが、この鳩が奇跡を起こした。本荘700キロレースにおいて当日ギリギリの夕方6時半(かなり暗かった)に帰り、支部2位、総合8位に入賞したのである。
 本件を師匠の山下氏に報告すると、「自由舎外は近所からのクレームが出る恐れがあることから実行できなかったが最強の舎外方法であり、自由舎外でレースを戦うことが夢であった。 鳩は個々のコンディションに合わせて運動するので状態の悪い鳩には無理がかからず、状態のよい鳩は1日中運動することが出来る。また、鳩は降りたり飛んだりを繰り返すことにより筋力トレーニングを行うことになる。なぜなら、一番負荷のかかる運動は飛び立ちであるからだ。」とコメントされた。また、同支部の強豪鳩舎の舎外方法は、「夜のうちに出舎口を開けておき、早朝の暗い時間から鳩を飛ばしている。」とのことであった。800キロや1000キロ以上の長距離レースにおいてもめざましい実績のある強豪鳩舎のコメントは、当日夕方の暗 闇においても飛びつづけ、翌日早朝に他鳩舎に比べ飛び立つ時間の早い選手鳩の育成につなが り、700〜1000キロレースにおける成功を示唆するものであった。
 短、中距離のスピードレースでの総合優勝の実現に疑問を持ち暗中模索を続けていた私にとって、当日ギリギリ、若しくは翌朝の日の出と同時帰還の7〜800キロのレースなら、勝機 があるのではないかと、一筋の光が見えたように思った。


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